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大阪高等裁判所 昭和37年(く)9号 決定

少年 G(昭一七・一〇・二〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、これを要するに、本少年は家事手伝をしたり、メッキ工として働きに行つたりしていたが、父が北朝鮮に家族を連れて引揚げるといつたことから、之に反対して家出し大阪市内を徘徊するうち本件非行をなしたものであるが、その後前非を悔い強く反省しており、父も一旦北朝鮮帰国を思い止まり家族一致して今後少年の指導監督に努力したいと考えているから、原決定の取消を求めるというのである。

よつて本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査すると、本少年は浮浪癖、盗癖が習性化しつつあり旦つその保護環境が不適切であるという理由で昭和三十二年七月一日大阪家庭裁判所で教護院送致決定の言渡しをうけ、直ちに修徳学院に入院させられたが、翌日同学院を無断外出して父母の許に帰りしばらく家事手伝をしたり、メッキ工として働きに行つたりしていたが昭和三十六年三月父が北朝鮮帰国の計画を明かにしたことから少年がこれに反対して家出して大阪市内を転々するうち、同年九月十日頃から昭和三十七年一月二十四日頃迄の間に十六回に亘つて単独又は通称Aちやんと共謀して大阪市内等においてトランジスターラジオ等計十六点時価計金十五万九千三百円相当のものを窃取した原決定の認定した事実が認められる。

そして本件非行事実は回数において多く、その被害も相当額に上り、本件犯行後自ら強く反省しているとはいえ、本少年の不真面目な生活態度は依然として矯正せられていない。少年の保護者は、少年に対する保護意欲はある程度認められるが、これまでの実績に徴しても既に相当程度進行した非行的傾向のある本少年に対し、家庭における保護能力には到底期待しがたいから、本少年の環境調整と性格矯正とのためには、収容保護の措置も巳むを得ないものと認められる。従つて原裁判所が本少年を中等少年院に送致する旨を決定したことは、その処分が著しく不当とは認められない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に則り主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 奥戸新三 裁判官 塩田宇三郎 裁判官 竹沢喜代治)

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